室内環境指標と安心感・総合快適度の関係
1.研究背景
スマートホームでは、温度・湿度・CO₂・VOCなどの環境データを数値として取得することが可能です。しかし、「数値的に安全な環境」が「心理的な安心」や「総合的な快適さ」にどのように影響するのかについては、十分に整理されていません。
本プロジェクトでは、1日3回の定点観測データを蓄積し、環境数値と主観評価の関係を実証的に分析します。
2.研究目的
本研究の目的は、次の関係構造を明らかにすることです。
- 室内環境の数値が安心感にどの程度影響するのか
- 安心感が総合快適度にどの程度影響するのか
- 環境が基準内でも不快が発生するケースは何か
- 環境を自分で調整したくなる閾値はどこか
単なる環境データの取得ではなく、「安全」と「安心」と「快適」の構造を可視化することが目的です。
3.研究デザイン
- 研究形式:単一被験者縦断観察研究(Repeated Measures Design)
- 測定頻度:1日3回(朝・昼・晩)
- 測定期間:1年間
通知による介入は行いません。毎回、同じタイミングで客観データと主観評価を取得します。
4.取得データ項目
(1)客観的環境データ
- 温度
- 湿度
- 照度
- CO₂濃度
- VOC濃度
- 気圧
- 騒音値
(2)主観評価データ
- 身体的違和感
- 温冷感(5段階評価)
- 空気の快適さ
- しづけさの快適感
- 安心感
- 総合快適度(5段階評価)
- 環境を自分で調整したいか
- 今の環境で気になる点/改善できるなら何を変えたいか(自由記述)
主観評価データは、在宅時のみ評価します。
5.仮説設定
本研究では、以下の仮説を検証します。
1.CO₂濃度が高いほど安心感は低下する
2.安心感は総合快適度に正の影響を与える
3.身体的違和感は総合快適度を低下させる
4.環境指標が基準内でも安心感が低い場合、快適度は低下する
5.一定の環境閾値を超えると環境調整意欲が発生する
6.分析方法
- 相関分析
CO₂と安心感、VOCと総合快適度、騒音としづけさ評価などの関連性を確認します。 - 重回帰分析
総合快適度を目的変数とし、環境指標・安心感・身体違和感を説明変数として影響度を分析します。 - 構造的検討
「環境 → 安心感 → 総合快適度」という媒介構造の可能性を検討します。
7.主要評価指標
- 総合快適度の平均値
- 安心感と総合快適度の相関係数
- CO₂と安心感の相関係数
- 環境調整意欲が発生する閾値
8.本研究の位置づけ
本研究は因果関係の確定を目的とするものではなく、関連構造の把握を目的とした基礎段階の実証です。
将来的には、
1.基礎相関構造の確立
2.閾値設計および通知設計の検証
3.実装モデルの構築へと発展させる構想です。
9.まとめ
本プロジェクトは、「安全を数値で測り、安心を主観で測り、快適との関係を明らかにする」という枠組みの実証研究です。
スマート環境における新たな評価軸として、「心理的安心」の定量化を目指します。
参考文献
朝倉書店 中島義明・大野隆造[編集] ◆人間行動学講座◆ すまう 住行動の心理学 新装版
